道尾秀介の原点である本作は、ホラーの不気味さとミステリの論理性が鮮烈に融合した傑作です。最大の魅力は、怪異の深層に横たわる切実な孤独と救済の物語にあります。論理で怪異を解く真備の怜悧さと、語り手・道尾の繊細な感性が共鳴し、恐怖はいつしか震えるような哀惜へと昇華されていきます。
下巻で明かされる真実の奔流は、読者の予想を裏切り、心の柔らかな部分を容赦なくえぐります。事件の背後に潜む眼の正体が、過去の残照であると気づく時、読者は震愕するでしょう。美しくも残酷な結末は、忘れがたい余韻と共に、著者が描く人間愛の深さを私たちに突きつけます。