光媒の花
あらすじ
ISBN: 9784087468915ASIN: 4087468917
一匹の白い蝶がそっと見守るのは、光と影に満ちた人間の世界―。認知症の母とひっそり暮らす男の、遠い夏の秘密。幼い兄妹が、小さな手で犯した闇夜の罪。心通わせた少女のため、少年が口にした淡い約束...。心の奥に押し込めた、冷たい哀しみの風景を、やがて暖かな光が包み込んでいく。すべてが繋がり合うような、儚くも美しい世界を描いた全6章の連作群像劇。第23回山本周五郎賞受賞作。
道尾秀介という作家の真骨頂は、漆黒の絶望の底に、針の穴ほどの救いの光を穿つ筆致にあります。本作は、過酷な運命に翻弄される人々を一匹の白い蝶が静かに繋いでいく連作群像劇。独立した物語が美しく共鳴し合うことで、孤独な魂が赦されていく過程を見事に描き出しています。 緻密な構成と、匂い立つような叙情的描写は、読者の五感を揺さぶり、隠された真実を鮮やかに浮かび上がらせます。ただ悲劇をなぞるのではなく、深い痛みを知る者だけが辿り着ける「暖かな光」の尊さを説く本作は、ミステリの枠を超えた純文学的な輝きを放つ、魂を震わせる傑作です。