道尾秀介という作家の真骨頂は、漆黒の絶望の底に、針の穴ほどの救いの光を穿つ筆致にあります。本作は、過酷な運命に翻弄される人々を一匹の白い蝶が静かに繋いでいく連作群像劇。独立した物語が美しく共鳴し合うことで、孤独な魂が赦されていく過程を見事に描き出しています。
緻密な構成と、匂い立つような叙情的描写は、読者の五感を揺さぶり、隠された真実を鮮やかに浮かび上がらせます。ただ悲劇をなぞるのではなく、深い痛みを知る者だけが辿り着ける「暖かな光」の尊さを説く本作は、ミステリの枠を超えた純文学的な輝きを放つ、魂を震わせる傑作です。