あらすじ
2020年、新型コロナ感染拡大により春のセンバツに続いて夏の甲子園も中止。愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着した元高校球児の作家は、選手と指導者に向き合い、“甲子園のない夏”の意味を問い続けた。退部の意思を打ち明けた3年生、迷いを吐露する監督。彼らは何を思い、どう行動したのか。パンデミックに翻弄され、日常を奪われたすべての人に送る希望のノンフィクション。
ISBN: 9784101206929ASIN: 4101206929
作品考察・見どころ
本作は、甲子園という聖地を奪われた球児たちの慟哭を、元球児の作家である早見和真が魂を削って記した渾身のノンフィクションです。単なる記録文学の枠を超え、正解のない問いに立ち向かう人間の尊厳を浮き彫りにしています。目標を失った絶望の淵で、それでもなお前を向こうとする若者たちの心の揺らぎを、著者は当事者以上の熱量で掬い上げ、読者の胸を激しく揺さぶります。 強豪校の矜持と、一人の少年としての苦悩。その狭間で揺れる感情の機微を、緻密な対話と内省的な筆致で描き出す手法は見事です。ここには、成功者の物語ではなく、未完のまま幕を閉じざるを得なかった者たちが、自分自身の物語をどう再定義していくかという文学的な挑戦が刻まれています。不条理な日常を強いられたすべての人に、再生への勇気を与える真実の言葉がここにあります。






