あらすじ
吾輩(わがはい)もネコである。名前は、マル。四国の愛媛県を3度も旅したクールなハチワレ猫として有名だ。最初の記憶は松山市の捨てネコカフェ。そこでアンナという人間の女の子と会い、道後の家で一緒に暮らすようになる。アンナはオレの大親友。人間たちがオレを「かわいくない」と言ってきても、アンナは一人「マルはクールなの!」と守ってくれた。でも、ある晩、窓の外から黒いメスネコがオレに告げた。「気高き者よ。その目で広い世界を見るのです──」 ニャーーーーーン! 体の奥底に震えを感じ、オレはアンナの家を飛び出した。ある時はあの日の黒ネコを探すため、ある時は病を治す秘密の泉を探すため、そしてある時は最高のダンスを踊るため。旅の途中、オレはいろんなものを見た。大切な仲間たちとの出会いと別れ、そして恋。冒険はいつだってオレに大切なものを教えてくれる。「もっと広い世界を見てみたい」。乗り込んだ船が向かった先は兵庫県。そこには五つの国があるという。きっと胸躍る体験が待っているに違いない──。 愛媛新聞と神戸新聞をまたにかけた、地方紙史上かつてない壮大なプロジェクトがここに始動。デブ猫マルの愛と哀しみの物語、ついに開幕!
作品考察・見どころ
早見和真氏の筆致は、単なる冒険譚の枠を超え、葛藤を抱えるマルの魂を浮き彫りにします。己の直感に従い未知へ踏み出す姿は、自由と孤独を引き受ける冒険者の美学に満ちています。マルの「哀しみ」とは欠損ではなく、世界を深く愛するために必要な感受性そのもの。読者はその高潔な精神に、強烈な共感を抱くはずです。 兵庫の「五国」を巡る旅は、情緒豊かな挿絵と響き合い、日常の神秘や他者との絆を瑞々しく描き出します。安住を捨て「広い世界」を渇望する魂へ贈られた、現代の放浪記であり至高の人間讃歌です。マルの瞳を通じ、私たちは当たり前の景色の中に眠る輝きと、忘れかけていた真の自由を再発見するでしょう。