あらすじ
金と名声のため中国に赴いた傭兵ウィリアムとトバールは、砂漠地帯で馬賊の襲撃を受けて多くの仲間を失い、ようやく辿り着いた万里の長城で禁軍に投降する。長城ではすでに完全武装した大軍団が、敵を迎え撃つべく臨戦態勢に入っていた。やがて、長城各所から敵の襲来を知られる狼煙が一斉に上がると、巨大な響きとともに、遥か山々の向こうから、何千、何万もの未知の大群が長城めがけて怒涛のごとく押し寄せてきた。それは60年に一度現れるといわれる伝説の怪物“饕餮(とうてつ)”の群れだった。ウィリアムとトバールは信じられない光景に目を疑いながらも、人類VS饕餮の壮絶な戦争に否応なしに巻き込まれていく...。
ISBN: 9784801910522ASIN: 4801910521
作品考察・見どころ
この物語の白眉は、単なる怪物との死闘ではなく、利己的な傭兵が献身の精神に触れ、人間性を再定義する魂の変革にあります。巨大な長城は、外界の脅威を遮る壁であると同時に、個人の欲望と大いなる大義を隔てる境界線としても機能しています。不信から信頼へと転じる熱いドラマが、本作に壮大な叙事詩としての品格を与えています。 また、伝説の怪物「饕餮」を人間の果てなき貪欲の象徴として描く構成も深淵です。圧倒的な絶望を前に、集団の規律と個の美学が交錯する描写は、読む者の魂を激しく揺さぶります。自己犠牲の果てに何を守るのかという根源的な問いが、この戦記に鮮烈な文学的香気を添えており、読後には震えるような感動が残るはずです。

