谷崎潤一郎全集. 第16巻
あらすじ
ISBN: 9784124035766ASIN: 4124035764
敵の首級を洗い清める美女の様子にみせられた少年―戦国時代に題材をとり、奔放な着想をもりこんで描かれた伝奇ロマン「武州公秘話」。ほかに随想「恋愛及び色情」、文壇進出前後の若き日の回想録「青春物語」ほか、文壇での地位を不動のものとさせつつ、悩み多き私生活を送っていた昭和初期の作品を収載する。
谷崎潤一郎全集第16巻の白眉は、何と言っても「武州公秘話」の倒錯的美意識です。戦国、首級を洗う美女に魅了された少年の姿は、谷崎が終生追い続けた「苦痛と快楽の融和」を、高純度な幻想譚として結晶させています。残虐性と優雅さが矛盾なく同居する文体は、読者の理性を揺さぶり、根源的なエロスへと誘う魔力に満ちています。 随想や回想録は、耽美の王としての地位を固めつつあった時期の、谷崎の生々しい葛藤を映し出します。虚構と現実の狭間で悶える魂の記録は、彼の文学がいかに深い叫びから紡がれたかを物語っています。端正な美の裏に潜む、狂おしいまでの執着。その深淵に触れる悦びこそ、本書を紐解く最大の醍醐味と言えるでしょう。