あらすじ
盲目の三味線師匠に仕える佐助の、愛と献身を描いた物語。大阪の薬種問屋の娘琴は才があり美しかったが九歳で失明し、手代佐助に引かれて琴三絃の稽古に通ううち、たちまち頭角をあらわし衆にぬきん出る。二十一歳のとき春琴は弟子のひとりに熱湯をかけられ美貌が傷つけられたと思い込む。佐助は彼女の面影を脳裡に永遠に保持するため、自分で自分の目をつぶして盲目の世界に入る。
ISBN: 1100200035ASIN: 1100200035
作品考察・見どころ
谷崎潤一郎の筆致が冴え渡る本作は、美と献身が純化された耽美主義の頂点です。佐助の自己犠牲は、単なる盲信ではなく、理想の美を永遠に脳裡へ刻むための崇高な儀式と言えます。句読点を極限まで排した独特の流麗な文体は、読者の意識を現実から引き剥がし、濃密な官能と残酷さが同居する閉塞的な愛の世界へと誘います。 映像版では春琴の苛烈な美貌が具現化され、視覚的な悦楽を与えてくれますが、原作テキストの真髄は「見えないからこそ完成する美」にあります。言葉によって読者の想像力の中に結ばれる残像は、いかなる映像をも凌駕する絶対的な偶像となり得るのです。映像の華やかさと活字の奥行きを往還することで、究極の愛の形をより深く咀嚼できるはずです。

