谷崎潤一郎
日本の美学の底には「暗がり」と「翳り」がある。
谷崎潤一郎が綴ったこの美学論は、近代化の荒波の中で彼が再発見した「光を拒むことで生まれる豊穣さ」の宣言です。闇の中にぼんやりと浮かぶ金箔の輝きや、漆器の奥深い艶。著者は、白日の下に晒される明晰さよりも、曖昧さや翳りに宿る官能的な美を、匂い立つような筆致で描き出します。 本作の真髄は、五感を研ぎ澄ませる執拗なまでの観察眼にあります。西洋的な明るさへの対抗軸として提示される陰翳は、日本人の精神性が育んだ静寂の宇宙そのものです。ページをめくるごとに、現代人が忘れた暗闇の温もりと、そこから立ち上がる幻惑的な美しさに、読者は深い陶酔を覚えるはずです。
谷崎 潤一郎 は、日本の小説家。明治末期から昭和中期まで、戦中・戦後の一時期を除き終生旺盛な執筆活動を続け、国内外でその作品の芸術性が高い評価を得た。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。ノーベル文学賞候補者。