吉田修一
地味で目立たぬOL本田小百合は、港が見える自分の町をリスボンに見立てるのがひそかな愉しみ。異国気分で「7月24日通り」をバス通勤し、退屈な毎日をやり過ごしている。そんな折聞いた同窓会の知らせ、高校時代一番人気だった聡史も東京から帰ってくるらしい。昔の片思いの相手に会いに、さしたる期待もなく出かけた小百合に聡史は…。もう一度恋する勇気がわく傑作恋愛長編。
吉田修一は、日常に潜む「祈り」のような憧憬を掬い上げる名手だ。本作の真髄は、現実の風景にリスボンを重ねる妄想の豊かさにある。地味な自己を守るための空想が、他者との関わりを通じて鮮やかな自己肯定へと転じる過程は、内省的な独白を重んじる小説ならではの醍醐味と言える。 映画版ではこの多重構造が視覚的に補完され、幻想と現実が交差する美しさが際立つ。テキストの繊細な心理描写と、映像の祝祭的な高揚感。二つのメディアを往復することで、読者は自らの退屈な日常をも愛おしく塗り替える勇気を得るだろう。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。
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