泉ゆたか
お江戸の訳あり三人女が営むのは”女のための”出合茶屋。泣いて笑って、元気をくれる時代小説!
泉ゆたか氏が描く本作の真髄は、密会場所としての出合茶屋を「女たちの救済の場」へと鮮やかに反転させた点にあります。江戸の厳しい世情に翻弄されながらも、訳ありの三人が紡ぐ温かな食膳と言葉は、閉塞感を抱える現代人の心にも深く共鳴します。単なる勧善懲悪に留まらない、人間の弱さと強さを丸ごと抱きしめるような優しい筆致が、読む者の魂を静かに震わせるのです。 それぞれに深い傷を抱えた三人の女性たちが織りなす連帯の美しさは、本作最大の文学的見所です。彼女たちが供する料理の一品一品が、客の凍てついた心を解きほぐしていく描写は、まさに著者の真骨頂と言えるでしょう。過去を悔いるのではなく、今をどう生き抜くかという凛とした祈りに満ちた本作は、読後に心地よい風が吹き抜けるような、至極の人間賛歌です。
泉 ゆたか は、日本の小説家。