あらすじ
御門周平の正体は、大脳病理学研究所の助手であったらしいことが、わかってきた。ニューギニアのとある部族にまつわる奇病のウィルス「独覚菌」を脳に植えつけられたため、記憶を失い、“獣化”現象にみまわれるようになってしまったのだ。運命の糸に導かれ、御門はメキシコの地を訪れる。そこには、マヤの末裔ラカンドン族の聖地で発見された油田の利権をめぐり、政府や大企業、ゲリラなどの凄絶な陰謀が渦巻いていた。消息不明であった京子をようやく救い出した御門であったが、彼女の意識は呪師により、閉ざされてしまっていた。そして研究者竹島丈二としての記憶を少しずつ取り戻しつつある御門は、瞬間の心の隙に、ラカンドン族に意識を乗っ取られてしまう!ノンストップ伝奇アクション巨篇、堂々の完結。
ISBN: 9784198508944ASIN: 4198508941
作品考察・見どころ
夢枕獏が描く本作の真髄は、肉体の変容を通して人間の「個」が崩壊する恐怖と美しさを炙り出した点にあります。古代の呪詛と科学が交差するメキシコの荒野はまさに魂の格闘場。獣性に抗い、失われた記憶を追い求める主人公の咆哮は、剥き出しの生命の尊厳を読者の魂に激しく問いかけてきます。 映像版の衝撃に対し、原作の白眉は獏氏特有の生理的な文体にあります。文字から立ち上る血の匂いや筋肉の律動は、読者の脳に直接響き、映像を超えたリアリティを喚起します。視覚的カタルシスと、書籍ならではの深淵なる内面描写。この重層的なシナジーこそが、本作を不朽の伝奇として完結させるのです。





















