あらすじ
李白宛の手紙とは別に、もう一通。玄宗皇帝側近の宦官・高力士が、死の直前に安倍仲麻呂へ書き遺した手紙には、さらなる驚愕の事実が記されていた。その呪いは時を越えて結晶し、順宗皇帝は病床に伏し、瀕死の状態に陥っていた。空海は柳宗元に、呪法の正体を暴くように依頼される。これをもっていよいよ本格的に唐王朝の大事に関わることとなった空海は、橘逸勢や白楽天をはじめとした関係者と、大勢の楽人や料理人を率い、驪山の華清宮へと向かった。そこは、玄宗皇帝と楊貴妃が、かつて愛欲の日々を繰りひろげた場所であった。果たして空海の目的は―?十七年の執筆期間を要した大河伝奇小説、遂に堂々の完結。
ISBN: 9784198619176ASIN: 4198619174
作品考察・見どころ
夢枕獏が十七年を投じた本作は、歴史の裂け目に魔術的想像力を注ぎ込んだ伝奇文学の頂点です。空海を狂言回しに、人の愛憎が時を超えて巨大な「呪」へと昇華される様を、官能的かつ知的な筆致で描き出します。怪異の正体とは単なる怨霊ではなく、美しくも残酷な人間性の深層にある真実そのもの。この圧倒的スケールこそが、読者の魂を惹きつけて離しません。 豪華絢爛な映像版が唐の盛衰を視覚の奔流として再現したのに対し、原作は言葉でしか到達できぬ精神の深淵を抉ります。空海が展開する密教的宇宙観や、白楽天の詩情と呼応する「理」の美しさは、活字でこそ五感に響く奥行きを放つのです。映像の熱狂と小説の深遠な思索が共鳴し合う時、物語は真の完成を迎えます。両メディアを往還し、究極の知の祝宴を堪能してください。





















