野村萬斎氏が体現する安倍晴明の、狂言で培われた唯一無二の所作は前作以上に洗練され、もはや芸術の域に達しています。伊藤英明氏演じる博雅との、知と情が交錯するバディ関係は平安の闇に灯る救いです。本作は中井貴一氏の圧倒的な悲哀と、深田恭子氏の浮世離れした美しさが、運命に翻弄される人々の深い情念を鮮烈に描き出しています。
夢枕獏氏の原作が持つ文学的な「呪」の世界を、映像ならではの絢爛豪華な美術で視覚化した点は見事です。特に神話的悲劇という深淵なテーマを、実写の強みを活かした肉体的な躍動感へと昇華させました。小説の想像力を超える幻想的な演出は、単なる娯楽を超え、人間の根源的な業を見つめる重厚な芸術へと本作を導いています。