夢枕獏の妖艶な物語と天野喜孝の幻想美が共鳴する本作は、美という過酷な宿命を描く歴史幻想譚です。楊貴妃となる前の少女を巡り、人の欲望と怪異の影が交錯する世界観は、美しさが救いではなく周囲を狂わせる劇薬であることを突きつけます。この耽美的な緊張感こそが、読者を夢幻の深淵へと誘う魅力です。
中澤泉汰の端麗な描線は、唐代の濃密な闇と異界の気配を見事に可視化しています。伝説の裏側に潜む一人の女性の孤独が、現実を侵食する幻想と溶け合う瞬間。圧倒的な「紙上の美」に触れたとき、あなたは歴史の濁流に咲く一輪の花に、心奪われずにはいられないでしょう。