あらすじ
若い頃から、著者がいく度となく足を踏み入れたネパールとチベット。そこは、「動物も、人間も、虫も、花も、神々も、仏も、ヒマラヤの山々も、皆、同じこの地上でごった煮になっている。みごとなまでの曼荼羅」であった。その地で撮り貯めた写真を、『般若心経』の概念、思想のもとにまとめあげたものが、本書である。第三章では、『般若心経』は戯曲として書かれたものではないかと捉え、戯曲化された台本として提示している。その中では、ト書きというべき部分に宮沢賢治が登場して、彼の詩句からとられた言葉の数々を語るという、独創的な構成になっている。
ISBN: 9784094082883ASIN: 4094082883
作品考察・見どころ
夢枕獏がヒマラヤで目撃した「生と死の混濁」を、般若心経の視座で結晶させた一冊です。全編を貫くのは、人間も山も等しく曼荼羅の中に在るという圧倒的な慈しみ。宮沢賢治をト書きに配した戯曲的構成は、言語を超えた祈りを読者の胸に叩きつけ、既存の経典解釈を鮮烈に塗り替える文学的極北といえます。 映像版が峻厳な風景を視覚的に捉える一方、原作は言葉でしか到達し得ない「思索の深度」を湛えています。写真と文字の共鳴が、映像とは異なる静謐な魂の震えを呼び起こすのです。両者を併せて味わうことで、沈黙するヒマラヤの真実の声を多層的に聴くという、類稀な読書体験があなたを待っています。





















