あらすじ
安禄山の乱の折、長安の都を落ちのびた玄宗皇帝は、臣下の反乱を抑えるため、愛する楊貴妃を処刑せざるを得ない状況に陥った。しかしそこに現れた胡の道士・黄鶴は、驚くべき提案をする。それは、尸解の法を用いて楊貴妃をいったん仮死状態にして難を逃れ、そののちに倭国―日本に連れて行き、ほとぼりをさますというものだった。しかしこの案は、恐るべき結末を迎えることとなった...。遡ること四十数年前。晁衡こと安倍仲麻呂が詩仙・李白苑に遺した手紙に記された、身の毛もよだつ顛末。空海は、倭国の言葉で記されたこの手紙を、柳宗元のために読み下す。一方、青龍寺の恵果のもとにも、妖しき影が現れ...。
ISBN: 9784198618933ASIN: 4198618933
作品考察・見どころ
夢枕獏が描く本作は、唐王朝の栄華と密教の深淵を交差させた伝奇小説の最高峰です。最大の魅力は、若き天才・空海の圧倒的な知性と、呪術的で官能的な文体が醸し出す「妖しい美しさ」にあります。歴史の闇に葬られた楊貴妃の悲劇を巡る謎解きは、文字が五感を刺激する芸術の極致であり、読者を千年前の長安へと一気に引き込みます。 映像版が絢爛豪華な視覚美で物語を彩るのに対し、原作は言葉の連なりによって人物の孤独や情念の機微をより深く穿ちます。映像で補完されたスペクタクルと、テキストならではの思索的な深みが共鳴し合うことで、真実と虚構が入り混じる迷宮のような物語体験は完成するのです。書物の中で蠢く「鬼」たちの叫びを、ぜひその手で確かめてください。





















