あらすじ
ISBN: 9784101287829ASIN: 4101287821
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
米澤穂信が描く本作の真髄は、優雅な「バベルの会」という虚構のヴェールの裏側に潜む、氷のように冷徹な悪意の造形にあります。お嬢様たちの甘美な語り口は読者を心地よい陶酔へと誘いますが、それは最後の一行で奈落へと突き落とすための精緻な罠に過ぎません。日常の延長線上にある静かな狂気が、美しき伝統を浸食していく様は、まさに暗黒ミステリの極致と言えるでしょう。 各編を貫くのは、閉鎖的な環境ゆえの歪んだ情念と、知的な遊戯としての残酷さです。洗練された文章という「毒」を飲み下し、気づいた時には逃れられない絶望に直面する。理知的な伏線と倫理を置き去りにした結末がもたらす冷たい痺れは、単なる謎解きを超えた、他の追随を許さない圧倒的な文学的強度を誇っています。
