あらすじ
ISBN: 9784488451059ASIN: 4488451055
あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。--それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい……シリーズ第3弾。
米澤穂信が描く本作の真髄は、凡庸な幸せを切望しながらも、その鋭すぎる知性ゆえに非日常へと引きずり戻される人間の悲哀と滑稽さにあります。小市民という免罪符が、甘い恋の裏でいかに脆く危うい均衡の上に成り立っているかを、著者は冷徹かつ流麗な筆致で暴き出します。 特筆すべきは、謎解きという営みが単なる娯楽ではなく、自己矛盾に抗うための「呪い」として機能している点です。上巻の瑞々しい青春の光景は、後に訪れる真実を際立たせるための緻密な伏線に他なりません。知性とエゴが絡み合う心理の深淵を、秋の深まりとともに堪能してほしい、文学的企みに満ちた傑作です。
