あらすじ
ISBN: 9784101287812ASIN: 4101287813
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
本作は、自らの不在こそが周囲の幸福を叶える鍵だったという、あまりに凄惨な真実を突きつける米澤穂信の真骨頂です。並行世界という装置を使い、主人公という淀みが消えただけで家族も街も救われる様を冷徹に描き出します。青春の煌めきではなく、その裏側に潜む「自分がいない方が世界は美しい」という自己否定を抉り出す筆致は、読者の胸を容赦なく打ちのめすでしょう。 ミステリの枠を超え、人間の存在意義を問う哲学的な深みこそが本作の本質的な魅力です。完璧な姉が存在する世界を巡る旅は、自らの価値を信じたいと願う読者の心を粉々に砕くほどの熱量を持っています。この救いようのない結末に宿る、鋭利で美しい絶望をぜひ目撃してください。あなたの人生観を根底から揺さぶる、痛切なまでの名作です。
