あらすじ
ISBN: 9784622089551ASIN: 4622089556
映画監督・小津安二郎がさまざまな機会に書き綴った文章は、作品資料にとどまらず魅力的なものが多い。「殺人綺談」ほか軽快なモダンスタイルの初期エッセイ、従軍体験を克明かつ赤裸々に綴った日記と手紙、演技学講義「映画演技の性格」および映画鑑賞に必携の自作解説、そして脚本から映像へのプロセスを浮き彫りにする「東京物語」監督使用台本を収録。世界の巨匠OZUの全貌をコンパクトにとらえた1冊である。
モボ・エッセイ
殺人綺談
丸之内点景 東京の盛り場を巡る
車中も亦愉し
中国戦線にて
戦地からの手紙1 野田高悟・筈見恒夫宛書簡
従軍日記
戦地からの手紙2 野田高悟・筈見恒夫宛書簡
映画について
映画演技の性格
小津安二郎・自作を語る
映画の味・人生の味
「東京物語」監督使用台本
解説 田中眞澄

世界中の映画監督が究極の模範と仰ぎ、日本映画の精神性を静謐な映像美へと昇華させた至高の巨匠、それが小津安二郎です。サイレント映画の時代にキャリアを切り拓き、初期の瑞々しい短編コメディから、1930年代以降は人生の機微を穿つ重層的な主題へと深化を遂げました。彼のレンズが捉え続けたのは、結婚や家族といった、形を変えながら繰り返される世代間の絆の物語です。代表作である『晩春』や『東京物語』で見せた、ローアングルで固定された独自の視覚様式は、普遍的な人間の営みを神聖なまでの芸術へと変貌させました。生涯で62作品に携わり、平均評価6.9という安定した実績以上に、彼が映画史に刻んだ影響は計り知れません。ドラマ、コメディ、ロマンスという枠組みを超え、晩年の『浮草』や『秋刀魚の味』に至るまで、日常の断片に宿る「無常の美」を追求し続けました。2012年のサイト&サウンド誌における監督投票で『東京物語』が世界第1位に選出された事実は、没後もなお彼の哲学が現代のクリエイターを鼓舞し続けている証左です。映画という時間の芸術を通じて、日本人の心の深淵を描き切った小津安二郎。その揺るぎない作家性は、時代や国境を越えて輝きを増し、今もなお映画を愛する者たちを導く永遠の北極星であり続けています。