小津安二郎監督が戦前に放った本作は、洗練されたユーモアと洒脱な空気が結晶した傑作です。厳格な妻と恐妻家の夫、奔放な姪が織りなす軽妙なやり取りは、形式的な礼儀や「淑女」という虚飾の滑稽さを鮮やかに射抜いています。後の小津様式へと繋がる精緻な美学が、全編に瑞々しく息づいています。
栗島すみ子の威厳と斎藤達雄の絶妙な芝居が、夫婦の力学を活写します。モダンガールを象徴する桑野通子の自由さが日常に風穴を開ける爽快感は格別です。大人たちが守る「建前」の脆さと愛おしさを描く本作は、豊穣なエスプリで観る者の心を弾ませます。