失業した旋盤工の喜八は、ふたりの子どもを連れて職を求め工業地帯を歩き回るが、すべて門前払いを食らってしまい、結局木賃宿に泊まることに。そこで喜八は、幼い娘を連れたおたかという女性に出会うが…。
小津安二郎監督がサイレント映画の極致として描いた本作は、工業地帯の荒涼とした風景の中に、底辺を生きる人々の尊厳を静謐に刻んでいます。ローアングルから捉えられた幾何学的な構図は、孤独を雄弁に物語り、言葉を排したからこそ際立つ視線の交差が、観る者の魂を深く震わせます。 坂本武が見せる父親の慈愛と、飯田蝶子らが織りなす情愛の機微は、過酷な現実を照らす一筋の光です。不況という時代の荒波を背景に、ユーモアと切実なヒューマニズムを共存させた演出は圧巻。静かな沈黙の中に、人生のままならなさと愛おしさが凝縮された珠玉の傑作です。
監督: 小津安二郎
脚本: 小津安二郎 / 池田忠雄 / 荒田正男
音楽: 堀内敬三
撮影監督: 茂原英雄
制作会社: Shochiku