若き日の小津安二郎監督が放つ、瑞々しいモダニズムの香りが充満した傑作です。当時の流行を反映した都会的な映像表現は、後の静謐な作風とは異なる動的な魅力に溢れています。移動撮影を駆使した洒脱な演出が、登場人物の心の揺れを軽快に描き出し、銀幕に焼き付くモダンな空気感に心奪われます。
主演の髙田稔が放つアウトサイダーの哀愁と、川崎弘子の清らかな存在感が共鳴し、愛による再生という普遍的なテーマが気高く立ち上がります。過去を脱ぎ捨てて歩み出す尊さを、抑制の効いた演技で見事に昇華させており、本作は誇り高く生き直そうとする魂への、映画からの熱いエールに他なりません。