小津安二郎監督が放つ、若さゆえの瑞々しい反逆とペーソスが凝縮された珠玉の喜劇です。斎藤達雄の飄々とした演技が、世俗的な成功から逸脱する若者の精神を象徴し、深い解放感を与えます。細部に宿る小道具の使い方の妙や洗練された構図のリズム感は、サイレント映画の枠を越えた雄弁な映像言語として圧倒的な輝きを放っています。
本作の本質は、不況という時代にあっても悲観せず、持たざる者の連帯と自由を讃える点にあります。挫折を逆手に取り、型にはまった人生よりも内面の豊かさを肯定する視線は、極めてモダンな哲学です。軽快なユーモアの奥に流れる温かな人間愛こそが、本作を色褪せない永遠の青春映画たらしめているのです。