あらすじ
死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(『健やかな論理』)。家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろう。(『流転』)。あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。(『七分二十四秒めへ』)。社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。(『風が吹いたとて』)。尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。(『そんなの痛いに決まってる』)。性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(『籤』)。現代の声なき声を掬いとり、ほのかな光を灯す至高の傑作。
ISBN: 9784344035164ASIN: 434403516X
作品考察・見どころ
朝井リョウが放つ本作は、現代人が蓋をしてきた名付けようのない「生きづらさ」の輪郭を鮮烈に描き出しています。著者の冷徹かつ慈愛に満ちた眼差しは、善悪で割り切れない人間の業を執拗に追い詰め、読者の深層を揺さぶります。合理性だけでは救われない魂の叫びを掬い上げるリアリズムこそが、本作が持つ文学的魅力の核です。 自己への失望。そうした負の感情を否定せず、命を繋ぐ糧として肯定する凄絶な力強さが本作には宿っています。絶望の底で「どうしても生きてしまう」人間の滑稽さと尊さを同時に突きつける本作は、読者の心に、微かでありながら決して消えない希望の灯を灯してくれるはずです。





