あらすじ
国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。新時代の「スター」は誰だ。作家生活10周年記念作品〔白版〕「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応ーー作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。朝日新聞連載、デビュー10年にして放つ新世代の長編小説。
ISBN: 9784022517197ASIN: 4022517190
作品考察・見どころ
朝井リョウが十周年の節目に放った本作は、現代における「表現の正解」を冷徹かつ情熱的に問い直す傑作です。伝統的な映画製作に固執する尚吾と、YouTubeで数字を追う紘。対照的な二人の軌跡は、プロとアマチュアの境界が消失した歪な世界の写し鏡といえます。 物語の白眉は、作品の価値を測る「物差し」の多義性を抉り出す筆致にあります。芸術性か、それとも再生回数か。著者は安易な二項対立に逃げず、読者の価値観を根底から揺さぶります。何かを創り出そうとする全表現者に突きつけられた、残酷で切実な哲学書です。