吉田修一という作家が到達した、光と影の極致とも言える一冊です。伝説の女優の華々しい人生と、その背後に潜む原爆という歴史の重み。二つの時間が交錯する中で、忘却されゆく過去が若者の現在を鮮明に照らし出す構成は、あまりに気高く、読む者の魂を激しく揺さぶります。
本作の真髄は、凄絶な喪失を抱えながらも美しく生き抜く人間の誇りにあります。頁を捲るごとに溢れる銀幕の輝きと、沈黙に秘められた慈愛。絶望から希望を掬い上げるような筆致は、読者の心に消えない光を灯し、傷ついた現代を生きる私たちへ至上の救いを与えてくれるでしょう。