柴田よしき
悪魔のように悪賢く、美しい男妾あがりのヤクザ...それが、十年振りに麻生の前に現れた山内の姿だった。十年前の気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。この十年の間に何が起こったのだ?新宿を牛耳る大暴力団の幹部・韮崎誠一惨殺事件を捜査する麻生は、次第に過去に追い詰められ、因縁の波に翻弄されて暗い闇へとおちていく...。愛と宿命に操られた者たちの果てしなく長い夜。人間の原罪を問うて、深い感動を呼ぶ傑作。
柴田よしきが描く本作は、警察小説の枠を超え、人間の魂の不可逆的な変容を抉り出した罪と救済の抒情詩です。美しき悪魔へと豹変した山内の存在は、失われた純粋さの裏返しであり、その凄惨な過去と狂気に満ちた愛は、読む者の道徳観を激しく揺さぶります。 新宿の闇に塗り込められた宿命の連鎖は、刑事・麻生の眼差しを通して、我々が直視を避けてきた原罪の深淵を暴き出します。絶望の果てに微かに灯る光を追い求める筆致は圧巻です。この果てしない夜の底に沈むとき、あなたは真の愛の残酷さと気高さを知るはずです。
柴田 よしき は、日本の小説家・推理作家。『RIKO - 女神の永遠』で第15回横溝正史賞を受賞。