柴田よしき
「竜の涙」を飲んだことがありますか?都会の片隅で今夜もそっとカウンターに置かれる一皿、一杯。迷子になったり傷ついたり、意固地になったり独りぼっちになった彼女たちの心に、そっと染みるふうわりとしたお出汁の香。ヒット作『ふたたびの虹』で人々を癒した女将の包丁の音が、ことこと今宵もまな板で鳴って、ばんざい屋の夜が始まる...人気シリーズ第二弾。
柴田よしきが描くのは、単なる料理小説の枠を超えた魂の再生の物語です。まな板を叩くリズムや出汁の香りが五感を刺激し、都会の喧騒で磨り減った心を解きほぐしていきます。著者の繊細な筆致は、登場人物たちが抱える孤独を否定せず、ただそっと寄り添う慈しみに満ちています。 日常の食卓に宿る小さな奇跡を掬い取る視点は、読者の心に自己肯定の種を蒔いてくれます。竜の涙という象徴的なモチーフを通じて、不器用な生き方を肯定し、明日への一歩を支えてくれる。本作は、現代を生きる私たちが立ち止まり、再び歩き出すための聖域のような文学的滋味に溢れています。
柴田 よしき は、日本の小説家・推理作家。『RIKO - 女神の永遠』で第15回横溝正史賞を受賞。