あらすじ
品川宿の老舗宿屋「紅屋」を営む吉次郎は、二年ぶりの長旅から、見知らぬ女童を連れ帰ってきた。吉次郎は、女童・おやすの類まれな嗅覚の才に気づき、「紅屋」のお勝手女中見習いとして引き取ることに―。拾って貰った幸運をかみしめ、ゆるされるなら一生ここにいたいと、懸命に働くおやす。研究熱心な料理人・政一と、厳しくとも優しい女中頭・おしげのもと、年下の奉公人・勘平、「百足屋」のお嬢さま・お小夜とともに日々を過ごすなかで、人間として、女性として、料理人として成長していく。柴田よしき、初の時代小説シリーズ第一弾!
ISBN: 9784758443074ASIN: 4758443076
作品考察・見どころ
柴田よしきが放つ本作の真髄は、主人公おやすの類まれな嗅覚を通じて描かれる、鮮烈な情緒と時代の匂いです。単なる成功譚に留まらず、料理という創作活動を通して自らの居場所を切り拓く少女の魂の遍歴が、静謐ながらも熱を帯びた筆致で綴られています。 宿屋という縮図の中で交錯する人情の機微は、厳しさと慈愛に満ちており、読者の心を深く揺さぶります。一皿の料理に込められた誠実さが、孤独な少女をいかに変貌させていくか。彼女のひたむきな生き様は、現代を生きる私たちの心に、忘れかけていた真の豊かさを問いかけてくるはずです。