あらすじ
「わたしの宝石を担して貰いたいの」刑事を辞め私立探偵として独立した麻生龍太郎に、奇妙な依頼が舞い込んだ。東京地検の元検事で弁護士を営む早坂絹子とは旧知の仲だったが、叔母から譲り受けた指輪が盗まれたという。唯一の手がかりである叔母のかつての婚約者を訪ねた麻生は、やがて予想外の事実に突き当たり...(「CARRY ON」より)。麻生龍太郎と山内練の宿命―「RIKO」シリーズへと連なる魂を揺さぶる連作ミステリ。
ISBN: 9784043428106ASIN: 4043428103
作品考察・見どころ
本作は、伝説的ノワール「聖なる黒夜」で魂を削る戦いを見せた麻生龍太郎が、喪失と再生の狭間で足掻く姿を克明に描いた傑作です。警察を離れ、一人の探偵として生きる彼の眼差しには、癒えることのない傷跡と深い思慕が刻まれています。ハードボイルドの体裁を取りながら、その芯にあるのは、孤独を抱えた人間が放つ痛切なまでの叙情性です。 柴田よしきが紡ぐ言葉は、事件の裏側に潜む「人の業」を鮮やかに浮き彫りにします。依頼人の絶望に寄り添う麻生の姿は、救いとは何かを我々に問いかけます。過去の亡霊を背負いながら、それでも今日を生きる男の美学。静謐ながらも力強いこの物語は、読む者の魂を激しく震わせるに違いありません。