本書は、事故物件という特異な住環境から死を見つめ続けてきた松原タニシ氏が、日本各地の禁忌や死の淵へと足を踏み入れる、魂の巡礼記です。単なる恐怖体験の報告に留まらず、土地に刻まれた記憶や不可視の境界線を描き出す筆致には、生者が死者をどう受け入れてきたかという、日本人特有の死生観への深い洞察が滲んでいます。
著者の最大の魅力は、自らを依代のように差し出す徹底した当事者性にあります。呪いや伝承という非科学的な領域を、理屈ではなく身体感覚で捉えようとするその真摯な眼差しは、読者を日常の裏側にある異界へと誘います。死を知ることは、すなわち今をどう生きるかを問うこと。この旅路の果てに、あなたは自らの生が放つ微かな光を再発見するはずです。