あらすじ
ISBN: 9784488423131ASIN: 4488423132
両親を亡くした後、就職を機に「わたし」は妹を引き取る。ふたりで懸命に生きてきたが、最近になって妹が不可解な行動を取るようになり……。姉妹のあやうい関係を描く「小生意気リゲット」。教育実習先の小学校で出会った、“嘘つき”と呼ばれる少女の言葉の真意を、実習生が読み解く「狼少女の帰還」。祖父宛に届いた、六年前に亡くなった祖母からの手紙。それに込められた秘密を女子高生が追う表題作など、揺れ動く少女たちの心と、暖かさや切なさに満ちた謎を叙情豊かに描く全5編。青春ミステリの名手が贈る珠玉の短編集。
相沢沙呼は、日常に潜む微かな「心の綻び」を拾い上げる天才です。本作でも精緻なミステリ的技巧を土台に、思春期の揺らぎや血縁の危うさを、透明感溢れる筆致で鮮やかに描き出しています。謎が解ける瞬間に立ち現れるのは、単なる真相ではなく、誰にも言えなかった孤独や、愛ゆえの切実な祈りそのものです。 本作の核心にあるのは、言葉にならない想いをいかに救うかという文学的挑戦です。手紙や嘘といったモチーフを通じ、他者と理解し合うことの困難と、それでも繋がろうとする人間の尊さを謳い上げます。読後、あなたの心には春の雪のような静謐さと、消えない温もりが宿るに違いありません。