下村敦史
「島での最初の犠牲者は名探偵」「登場人物の一人は偽名」「島では四人が殺される」「共犯者がいる」など、巻頭に書かれた7つのネタバレ。嵐に閉ざされた孤島で起こる連続殺人を描いた作中作「双紋島の殺人」は、現実に起きた事件をもとにしたノンフィクションノベルだった。事件に巻き込まれたミステリー作家は、真相解明を読者に求め小説として刊行するが……。ミステリーの常識が崩壊する、前代未聞の“読者への挑戦状”。
巻頭で結末を明示する禁忌を冒した構成こそが、本作の真骨頂です。下村敦史はネタバレを提示することで、逆に「なぜその結末に至るのか」という論理の深淵へ読者を誘います。既知の情報を強烈な伏線へと変貌させる手腕は鮮烈で、予測を裏切る快感は、ミステリというジャンルそのものへの宣戦布告といえるでしょう。 虚構と現実が交錯する多層構造は、真実を求める人間の業を浮き彫りにします。犯人当てを超えた物語の本質的な悦びに、魂が震えるはずです。ページをめくるごとに常識が崩壊するこの知的迷宮は、あなたのミステリ観を根底から覆し、未踏の興奮へと叩き込んでくれるに違いありません。
下村 敦史 は、日本の小説家・推理作家。京都府生まれ。