あらすじ
ISBN: 9784800007643ASIN: 480000764X
リップシュタット戦役に勝利し、帝国の中枢から門閥貴族らを一掃したラインハルト・フォン・ローエングラムだったが、その代償はあまりにも大きかった。最大の腹心、そして、唯一無二の友との約束を果たすべく、彼は宇宙を手に入れようと決心する。折しも、そこに新たな作戦が具申された。それはガイエスブルグ要塞をワープさせ、これをもってイゼルローン要塞を攻略せんとする壮大無比な計画だった。一方、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーのもとには、同盟政府から召喚命令が届いていた。法的根拠のない「査問会」の席で、同盟政府の要人たちはヤンの国家への忠誠心を問いただすのだったー。
本書の白眉は、友を失ったラインハルトの孤独と決意の対比にあります。英雄譚の裏側に癒えぬ喪失感を刻む筆致は圧巻です。一方、ヤンが直面する査問会は衆愚政治の醜悪さを暴き出します。読者は、天才の苦悩と組織に抗う個人の矜持という、現代的な民主主義の寓話を目撃するはずです。 映像版は要塞戦の迫力が魅力ですが、原作の真骨頂は文字ならではの緻密な心理描写にあります。アニメの演出に対し、テキストは沈黙の重みや思考の深淵を深く伝えます。両者を味わうことで、冷徹な戦略の背後にある人間性の熱量がより鮮明に浮かび上がるでしょう。

田中 芳樹 は、日本の小説家。本名:田中 美樹。らいとすたっふに所属。代表作は『銀河英雄伝説』『創竜伝』『アルスラーン戦記』の三長編など。スペースオペラからファンタジー、現代を舞台とした小説、南北朝時代以降から南宋付近までの中国を舞台とした小説を発表している。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。