あらすじ
ISBN: 9784094804157ASIN: 4094804153
かつて憧れた亡き友人の妻と、その娘の結婚話をめぐり、初老の紳士3人組がさまざまなおせっかいをやく。滑稽さのなかに人生の真実がうかがえる成熟喜劇。原節子が母親役で味わい深い演技を見せ、東宝のスター司葉子、名優岡田時彦の娘の岡田茉莉子が小津映画に初出演。

世界中の映画監督が究極の模範と仰ぎ、日本映画の精神性を静謐な映像美へと昇華させた至高の巨匠、それが小津安二郎です。サイレント映画の時代にキャリアを切り拓き、初期の瑞々しい短編コメディから、1930年代以降は人生の機微を穿つ重層的な主題へと深化を遂げました。彼のレンズが捉え続けたのは、結婚や家族といった、形を変えながら繰り返される世代間の絆の物語です。代表作である『晩春』や『東京物語』で見せた、ローアングルで固定された独自の視覚様式は、普遍的な人間の営みを神聖なまでの芸術へと変貌させました。生涯で62作品に携わり、平均評価6.9という安定した実績以上に、彼が映画史に刻んだ影響は計り知れません。ドラマ、コメディ、ロマンスという枠組みを超え、晩年の『浮草』や『秋刀魚の味』に至るまで、日常の断片に宿る「無常の美」を追求し続けました。2012年のサイト&サウンド誌における監督投票で『東京物語』が世界第1位に選出された事実は、没後もなお彼の哲学が現代のクリエイターを鼓舞し続けている証左です。映画という時間の芸術を通じて、日本人の心の深淵を描き切った小津安二郎。その揺るぎない作家性は、時代や国境を越えて輝きを増し、今もなお映画を愛する者たちを導く永遠の北極星であり続けています。