あらすじ
亡き父から京都の老舗料亭「糺ノ森山荘」を継いだ朱堂明美(すどう・あけみ)は、経営再建の一手として、腕の立つ料理人・岩田と萩原による板長の座をかけた「料理対決」を発案。試みは評判を呼び、売上も持ち直し始めた。しかし勝負に敗れた萩原が、岩田との実力差を理由に、次の対戦を辞退。岩田が新たに指名した相手とは!?
マナガツオの柚庵焼(ゆうあんやき)、小鮎の天ぷら、ポテトサラダのカツなど絶品料理が多数登場!
好評シリーズ第3弾。
文庫オリジナル。
ISBN: 9784569904399ASIN: 4569904394
作品考察・見どころ
柏井壽氏が描く京都は、単なる観光地ではなく、守り抜くべき伝統と変わりゆく時代が交差する「生きた舞台」です。本作の真髄は、老舗料亭の再建というビジネスの枠を超え、料理人たちの矜持がぶつかり合う凄絶な美しさにあります。瑞々しい筆致で綴られるマナガツオや小鮎の描写は、読者の五感を激しく刺激し、食が持つ「人を動かす力」を鮮烈に描き出しています。 特筆すべきは、敗北や葛藤さえも滋味深い物語のスパイスへと昇華させる著者の巧みな洞察力です。対決を通じて浮き彫りになるのは、職人としての誠実さと、伝統を背負う覚悟の重み。技術の先にある、心と心が共鳴する瞬間を切り取ったこの一冊は、単なる美食小説の枠を超え、人生の機微を説く至高の人間讃歌といえるでしょう。