あらすじ
コロナショック前の2019年、京都市の観光客数は5352万人。うち外国人宿泊客は380万人で、
38万人だった2001年の実に10倍。なぜこの街は人を魅了するのか。京都を知り尽くす作家が、独特の魅力を創る力の正体に迫る。
平安時代の遺構がほとんど残っていないのにもかかわらず古都のイメージを生み出す「イメージ力」、旅人の心に響く「言葉力」、客が店を育てる「美食力」、既存の価値あるものにちゃっかり乗っかる「便乗力」、さらに疫病や災厄に負けない「厄除力」「リセット力」……。
京都人気にまつわる都人の本音も随所に飛び出す、「京都力」徹底分析エッセイ。
【本書から聞こえてくる、京都人のつぶやき】
・錦市場て、もともと観光客が来るようなとことちゃいまっせ
・〈一見さんおことわり〉てな店、めったにありまへんで
・最近、〈出汁巻きタマゴサンド〉を出すお店が増えましたなぁ
・「鯖寿司」って知らん間に京都の名物になったなぁ
・あの老舗料亭はんがラーメン売り出さはったんやて!
ISBN: 9784569849102ASIN: 4569849105
作品考察・見どころ
京都の深淵を観光ガイドの域を超えて描き出した快作です。柏井壽氏は、平安の幻影を現代に繋ぐイメージ力や、客が店を育む美食力など、街に潜む目に見えない力学を鋭く分析します。歴史にあぐらをかかず、したたかに変化を飲み込み、再構築し続ける都人の強靭な精神構造こそが、本作の真の主役といえるでしょう。 随所に滲む京都人の本音が、洗練された文章に独自の血肉を与えています。伝統という虚像を軽やかに扱い、便乗すらも文化へ昇華させる筆致は、美学と実利が同居する特異な空間の正体を鮮やかに暴き出します。読者は、この街がなぜ人を惹きつけ、何度でも再生を果たすのか、その核心にあるリセット力の凄みに魂を揺さぶられるはずです。