あらすじ
ISBN: 9784569764825ASIN: 4569764827
江戸で父の死の真相を探り続ける古橋笙之介は、三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。「桜の精」のような少女・和香の協力もあり、事件を解決するのだが...。ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた笙之介。絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、上総国搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。「真実」を突き付けられた笙之介が選んだ道とは...。切なくも温かい、宮部みゆき時代ミステリーの新境地!
本作は真実の重みと人の優しさを描く宮部文学の傑作です。核は「言葉」という諸刃の剣。偽文書の悪意が人を破滅させる一方で、笙之介が筆に込める誠実さが凍てついた心を溶かします。運命が桜のように降り注ぐ中、善き人であり続けようとする青年の姿は、読む者の魂を浄化します。 映像版は江戸の情緒を豊かに再現しましたが、原作の真価は独白に宿る内省の深さにあります。活字だからこそ、理不尽を飲み込み凛と立つ青年の強さが鮮烈に響くのです。映像の美と小説の心理描写が共鳴し合うとき、物語の慈しみは、不変の感動へと昇華されます。