あらすじ
ISBN: 9784168121104ASIN: 4168121100
神々の世界に迷い込んだ少女が、働きながら成長していく。ベルリン国際映画祭金熊賞等受賞のアニメ作品の全シーン・全セリフを収録。
宮崎駿の金字塔を全コマ収録した本書は、名前を奪われる「自己の喪失」と、労働による「再生」という文学的テーマを静止画の中で克明に描き出します。映画が流れる時間の芸術なら、本書は一瞬の表情や緻密な背景に宿る神々の息吹を、己のペースで深く読み解くための思索の書といえるでしょう。 映像版の躍動感に対し、本書は台詞の「言霊」を際立たせます。千尋が発する言葉の重みは、活字として視覚に刻まれることで、その切実さがより鮮明に胸に迫ります。動画では見落としがちな細部を再発見し、再び映像へ立ち返る。そんなメディア間の往復が、作品に込められた生命の力動をより深淵なものへと昇華させてくれるのです。

アニメーションという枠組みを超え、現代の神話を作り続ける至高の語り部、それが宮崎駿です。東映動画での下積み時代、「ガリバーの宇宙旅行」で自ら提案したラストシーンが採用された瞬間から、彼の伝説は静かに始まりました。「ルパン三世 カリオストロの城」で鮮烈な長編監督デビューを飾り、続く「風の谷のナウシカ」の成功を機に盟友・高畑勲らとスタジオジブリを設立。それ以来、彼は日本映画界の興行記録を次々と塗り替え、ついには「千と千尋の神隠し」で米アカデミー賞を受賞するなど、ウォルト・ディズニーらと比肩する世界的巨匠としての地位を不動のものにしました。 宮崎の描く世界は、常に自然と技術の葛藤、そして容易には到達できない平和への祈りに満ちています。彼の物語を牽引するのは、ステレオタイプを排した強靭な意志を持つ少女たちであり、絶対的な悪を置かずに敵対者にも慈悲深い葛藤を持たせる重層的な人間描写は、観る者の倫理観を深く揺さぶります。FindKeyの統計によれば、計94作品に及ぶ膨大なキャリアを通じて平均評価は星7.2という驚異的な安定感を誇り、アドベンチャーやファミリーというジャンルを芸術の域へと昇華させました。緻密な手書きアニメーションへの執念と、資本主義への批判的眼差し。その相反する情熱が結実した一本一本の映画は、時代を超えて世界中の人々の心に深く根を張り続けています。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。