本作の魅力は、十九世紀ロンドンの情緒をスチームパンクへと昇華させた躍動感ある映像美にあります。緻密なメカ描写と縦横無尽なアクションは、観る者の冒険心を激しく揺さぶります。広川太一郎氏の洒脱な演技と大塚周夫氏による憎めない悪役の掛け合いは、知的な駆け引きに極上のユーモアを添え、作品に唯一無二の気品を醸し出しています。
原作の重厚な推理劇を大胆に解体し、快活な活劇へと再構築した点こそが本作の白眉です。文字では描ききれない機械の駆動音や空を飛ぶ高揚感を視覚・聴覚にダイレクトに訴えることで、不朽の探偵像に新たな生命を吹き込みました。理知的な謎解きを超えた、アニメーションならではの自由と悦びに満ちた傑作です。