あらすじ
13歳で故郷を離れて流浪し、帰還して苦難の末に、モンゴル族を統一したテムジンは、ついに〈チンギス・カン〉を名乗る!
モンゴル族を統一し、さらにケレイト王国を滅ぼしたテムジンは、弟のカサル、テムゲ、長男ジョチらに出動を命じ、タヤン・カンが統べるナイマン王国との戦いを進める。そのナイマン王国の大軍の中に、ジャムカの千五百騎が、ホーロイ、サーラルとともに潜んでいた。
崩れたナイマン軍を見届けて馬首を回したテムジンは、眼前にあるはずのない旗を見る。
ジャムカーー。
とっさに吹毛剣を抜いたテムジンだが、すさまじい斬撃を受けて落馬する。
【著者略歴】
北方謙三(きたかた けんぞう)
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部卒業。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長編部門、91年『破軍の星』で第4回柴田錬三郎賞を受賞。2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞、05年『水滸伝』(全19巻)で第9回司馬遼太郎賞、07年『独り群せず』で第1回舟橋聖一文学賞、10年に第13回日本ミステリー文学大賞、11年『楊令伝』(全15巻)で第65回毎日出版文化賞特別賞を受賞。13年に紫綬褒章を受章。16年「大水滸伝」シリーズ(全51巻)で第64回菊池寛賞を受賞。『三国志』(全13巻)、『史記 武帝紀』(全7巻)ほか、著書多数。
映画・ドラマ版との違い・考察
北方謙三が描く「チンギス紀」は、血と魂がぶつかり合う極限の人間ドラマだ。本作「日輪」におけるテムジンとジャムカの宿命の激突は、言葉の端々から火花が散るような緊張感に満ちている。北方流の「ハードボイルド史観」が冴え渡り、吹毛剣を振るう一瞬の静寂と、落馬の衝撃が読者の五感を激しく震わせる。 映像化作品では雄大なモンゴルの風景が視覚を圧倒するが、原作には映像で捉えきれない「内なる荒野」の深淵がある。敗北すらも血肉に変えていくテムジンの精神的葛藤は、文章という研ぎ澄まされた刃を通じてのみ心に深く突き刺さる。両メディアを往還することで、歴史の偶像は一人の生身の男として、熱く完成されるのだ。









