あらすじ
警視庁組織犯罪対策部の沢渡と滝本組幹部の波多野は、組織に追われる中国人女性を見殺しにしたトラウマを抱えていた。そんな二人のもとに中国黒社会の新興勢力「義水盟」の沈が現れる。黒社会の大組織・天老会に追われているカンボジア人女性サリカを匿ってほしいと沈から頼まれる二人。サリカは天老会の最高機密を握っているらしい。義侠心に富む波多野はサリカを隠れ家に匿うことになるが...。トラウマをもつ無気力警官、武闘派ヤクザ幹部、そして若き黒社会の首領が交錯するとき、漆黒の闇に潜む巨悪が顔を覗かせる―『機龍警察』の著者による書き下ろし長篇警察小説。
ISBN: 9784022511119ASIN: 4022511117
作品考察・見どころ
月村了衛の真骨頂は、鋼のような筆致で描かれる「法の外側にある正義」の揺らぎにあります。本作は単なる警察小説の枠を超え、過去の罪過に魂を摩耗させた男たちが、漆黒の絶望の中で微かな矜持を取り戻そうとする凄絶な救済の物語です。罪悪感という枷を嵌められた警官と極道の奇妙な連帯は、正邪の境界線を極限まで曖昧にし、読者を倫理の迷宮へと誘います。 沈みゆく世界を冷徹に捉える視線と、その奥底で沸騰する剥き出しの熱情。国際的な黒社会の権力抗争を背景に、守るべき弱者の存在が浮き彫りにするのは、社会の深淵で喘ぐ者たちの生存への渇望です。暴力が理不尽に吹き荒れるなか、一筋の光明を求めて泥を這う彼らの生き様は、読む者の胸を激しく焦がす極上のノワールとして結晶しています。










