月村了衛が描くのは、時代劇の皮を被った純然たるハードボイルドの精髄です。本作の白眉は、幕末という転換期に六連発のコルトという異物がもたらす圧倒的な「断絶」の描写にあります。伝統的な刀剣の美学が冷徹な銃声によって切り裂かれる瞬間、読者は単なる復讐劇を超えた、血と硝煙に彩られた文明批評的なカタルシスを味わうことになります。
虚無を抱えた主人公・郎次の孤独な闘争は、まさに大藪春彦賞に相応しい重厚な響きを湛えています。裏切りの中で鋼鉄の冷たさに魂を託す彼の姿は、時代を問わぬ人間の業を浮き彫りにし、私たちの胸に抜き身のナイフのような鋭い感動を突き立てるのです。