月村了衛
ライザ・ラードナー、警視庁特捜部付警部にして、元テロリスト。自らの犯した罪ゆえに、彼女は祖国を離れ、永遠の裏切り者となった。英国高官暗殺と同時に彼女の処刑を狙うIRFには“第三の目的”があるという。特捜部の必死の捜査も虚しく、国家を越える憎悪の闇が見せる最後の顔。自縄自縛の運命の罠にライザはあえてその身を投じる...過去と現在の怨念が狂おしく交錯する“至近未来”の警察小説第二弾。
月村了衛が描くのは、SFの枠を超えた人間の罪と罰を巡る精神のドラマです。本作の核にあるのは、過去という鎖に縛られた者の慟哭であり、法と正義の境界で揺れる国家の虚飾を暴く筆致は、読者の倫理観を激しく揺さぶります。 主人公ライザが背負う宿業は、冷徹な国際政治の渦中で熱を帯び、凄絶な終焉へとなだれ込みます。絶望の果てに彼女が選ぶ決断は、魂を焦がすほどに美しく、残酷です。緻密なリアリズムと情念が結晶化した本作は、まさに至近未来警察小説の金字塔と呼ぶべき深淵を湛えています。
月村 了衛 は、日本の小説家。予備校講師、脚本家を経て小説家となる。