月村了衛が描く本作は、SFという外装を借りつつ、現代日本の政治的闇を鮮烈に抉り出す極上の警察小説です。巨大疑獄を巡る国家の権益と、現場に生きる個人の矜持が激突する凄絶な展開はまさに圧巻。緻密な設定が生む圧倒的なリアリズムと、冷徹な筆致によって紡がれる人間模様が、読者をかつてない緊張感の渦へと引き込みます。
組織の論理を背負う沖津特捜部長の苦渋の決断は、正義の在り方を根底から問う本作最大の文学的見所です。謎の暗殺者に翻弄される警察機構の機能不全と、その裏に潜む巨大な悪の影。激闘の果てに立ち上がる深い悲哀とカタルシスは、単なる娯楽を超えた重厚な読書体験を約束してくれるでしょう。