あらすじ
日本の推理小説界の礎を築き上げたのが江戸川乱歩であるのは異論のないところであろう。実作者としては「二銭銅貨」に始まる綺羅星の如き作品群を著わし、数多くのエッセイや論文によって内外の作家と作品を紹介し、かつまた<宝石>誌の編集などを通して、多くの新人作家を発掘、育成した。その巨人の短編小説の粋を収めたのが本巻である。 デビュー間もない時期に発表された「ニ癈人」を筆頭に、ご存じ明智小五郎が初めて登場した記念すべき短編「D坂の殺人事件」から、戦後の名品「防空壕」に至る全十編を、初出誌の挿絵を付してお届けする。
ISBN: 9784488401023ASIN: 4488401023
作品考察・見どころ
江戸川乱歩が産み落とした名探偵、明智小五郎。その初陣を飾る本作は、単なるパズルとしての推理を超え、大正の妖しい空気感と人間の深淵を鮮烈に描き出しています。古本屋の二階で着流し姿のまま思索に耽る明智の佇まいは、理知と狂気が隣り合わせであることを予感させ、読者を一瞬にして乱歩の迷宮へと誘うのです。 本作の本質は、心理学的洞察に基づいた視線の不確かさと、日常の裏側に潜む歪んだ愛欲の対比にあります。論理の刃で真相を抉り出す快感の先に、解明不能な人間心理の闇が口を開けて待っている。この知的な興奮と官能的な恐怖の融合こそが、百年の時を経ても色褪せない乱歩文学の真髄といえるでしょう。



























































