あらすじ
ISBN: 9784488401122ASIN: 4488401120
探偵小説に精神分析を導入する試みの先鞭をつけた作品「疑惑」、ヒロインの訴えるような語り口が印象的で、再三映像化、劇化されている「人でなしの恋」等、大正十四年から十五年にかけて発表された十編を収録。初出時の挿絵全点を付した江戸川乱歩短編集成第三弾。
江戸川乱歩が描くのは、日常の裏に潜む歪んだ美意識と、狂気へ至る純愛の深淵です。表題作では、生身の女性が人形という無機物に敗北する悲劇を通じ、愛の対象が人間である必要さえ失われる倒錯した耽美性が際立ちます。乱歩特有の濃密な文体は、読者の五感を麻痺させ、現実と幻影の境界を曖昧にする魔力に満ちています。 幾度も映像化されていますが、映像が視覚的な美を強調するのに対し、原作の真髄は独白が放つ圧倒的な閉塞感にあります。文字だからこそ描ける粘りつくような情念の機微が、読者の想像力を極限まで引き出します。映像で耽美な世界を補完し、活字で魂の震えを追体験する。その相乗効果こそが、乱歩が仕掛けた禁断の迷宮を歩む醍醐味です。

江戸川 乱歩 は、日本の推理作家、怪奇・恐怖小説家、アンソロジスト。日本推理作家協会初代理事長。位階は正五位。勲等は勲三等。ペンネームの由来は、小説家のエドガー・アラン・ポーのもじり。本名は平井 太郎。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。