あらすじ
ISBN: 9784344427303ASIN: 4344427300
「娘の小学校受験が終わったら離婚する」。そう約束していた播磨和昌と薫子に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れたーー。病院で彼等を待っていたのは、“おそらく脳死”という残酷な現実。一旦は受け入れた二人だったが、娘との別れの直前に翻意。医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気とも言える薫子の愛に周囲は翻弄されていく。
東野圭吾が脳死という重厚なテーマに挑み、生と死の境界線を鋭く問い直した傑作です。最先端技術によって眠り続ける娘を維持する行為は、果たして救済か、それとも狂気か。論理的な枠を超え、魂の在処を巡る究極の哲学的ジレンマが、読む者の倫理観を激しく揺さぶります。 母・薫子の深い愛は、やがて周囲を凍りつかせるほどの美しき執念へと変貌していきます。彼女が突きつける純粋な問いは、善悪の彼岸にある人間の根源的な業を鮮烈に浮き彫りにします。一滴の涙とともに、私たちの死生観を根底から変えてしまうような、凄まじい熱量を持った魂のドラマです。

現代日本のエンターテインメント界において、これほどまでに映像制作者たちの創作意欲を刺激し続ける作家は他にいない。東野圭吾は、単なるミステリー作家の枠を遥かに超え、人間の業と愛を鮮烈に描き出す稀代のストーリーテラーとして、映画・ドラマ界に君臨している。1958年に生を受け、エンジニアとしての理知的な視点を持ち合わせた彼は、緻密なロジックと情動的なドラマを見事に融合させた。その軌跡は、デビュー以来、数多の傑作を世に送り出す挑戦の連続であった。特に、科学的検証を背景にしたシリーズや、刑事の鋭い洞察が光る物語群は、文字という媒体を超えてスクリーンの中で躍動し、観客を深い思索へと誘ってきた。キャリアの統計が示すのは、単なる多作さではなく、ミステリー、ドラマ、クライムというジャンルの境界線を自在に行き来する卓越した構成力である。トリックの鮮やかさ以上に、犯行の裏に隠された動機という名の人間ドラマを重視する彼の作風は、演者の魂を揺さぶり、重厚な映像美を生み出す源泉となっている。普遍的なテーマを扱いながら常に時代の先端を射抜くその感性は、今後も業界の羅針盤として、我々に忘れがたい鑑賞体験を与え続けるに違いない。