あらすじ
東野圭吾の同名小説を広末涼子主演で描いた、ミステリータッチの甘く切ないラブ・ストーリー。愛する妻と娘に囲まれ満ち足りた生活を送る杉田平介。だがある日、 妻・直子と娘・藻奈美が乗ったスキーバスが崖から転落する。 二人は病院に運ばれるが、まもなく妻は息を引き取る。娘のほうは、なんとか一命を取りとめたものの、意識が戻った彼女は自分は妻の直子だと告白する。やがて平介もそれを信じ、直子は人前では17歳の藻奈美として振舞い、二度目の青春を謳歌するが……。
作品考察・見どころ
本作の最大の白眉は、非日常的な設定を極めて切実な愛の物語へと昇華させた広末涼子の圧倒的な演技力にあります。一人の身体に宿る二つの人格を見事に演じ分ける彼女の瞳は、時に瑞々しい少女であり、時に深い慈愛を湛えた妻そのものです。それを受け止める小林薫の抑えた静かな芝居が、出口のない葛藤をより鮮明に描き出し、観る者の胸を締め付けます。
東野圭吾による原作が持つ緻密な心理描写を、映像ならではの色彩と静謐な空気感で包み込んだ本作は、文字では捉えきれない「愛するゆえの残酷な献身」を可視化しました。肉体と魂の乖離という命題を、極上のメロドラマへと着地させた演出力は見事です。最愛の人のために己の存在を消し去るという、切なくも美しい究極の愛の形を、ぜひその目で見届けてください。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。